文化財修理

柱の不陸・傾斜修正

 下荒井観音堂では、礎石の不同沈下により柱の高さが不揃いになっていました。これを修正するため、柱を1本ずつジャッキアップして、柱の下に飼物を入れていきました。文化財建造物の不陸修正では、鉛の板が使われることが多くあります。鉛は軟らかいので、上から荷重が加わると変形して、自然石の凸凹に馴染むのです。今回の修理でも、沈下量が小さい柱では、鉛板を重ねて飼物とすることにしました。残念ながら、沈下量が大きい柱も多く、当初は木材で飼物を継ぎ足す予定でしたが、礎石に光付けてある柱に飼物を足そうとすると、柱下端を切らなければならないこと、また今度は飼物を光付けるためには、ある程度大きな部材を足さなければならないことを考慮して、木材で飼物を継ぎ足すのは良策ではないと判断しました。このため、小さい飼物を横から入れ、廻りの隙間に充填補修用のエポキシ樹脂を詰め込むことにしました。柱1箇所にジャッキ2基を設置し、部材に損傷が及ばないことを確認しながら慎重に揚げていきますが、上部で「ミシッ」「カタッ」と音がすると、落ち着かないものです。向拝柱も沈んでいたため、ケヤキ材で飼物を作り、礎盤の下に差し込みました。

柱の下に入れた鉛板

 柱の不陸調整が終わったところで、今度は傾斜の修正を行いました。柱を養生しながら、起こしたい面とその両隣の3面にぐるりとワイヤーロープを廻し、間に2箇所レバーブロックを入れ、レバーを巻くことによって、起こしたい面を引き寄せます。これによって、ある程度は起きてきたのですが、計測値ではまだ足りないということで、サポートを飼って押すことにしました。これが効力を発揮し、建物がほぼ垂直になるように修正することができました。サポートはそのままにして、仮筋違を各面に打ち付け、固定しました。長押を取り付けるまでは、このまま固めておきます。

レバーブロックとサポートによる屋起こし
仮筋違とサポートによる固定
会津は実りの秋、稲刈りの季節となりました

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