文化財修理

茅葺型屋根の修理④<鋼板葺の特徴>

 今回の屋根工事では、元のトタン(亜鉛メッキ鋼板)の代わりに、より防食性の高いガルバリウム鋼板を用いました。住宅や工場の屋根等にもよく見かける鋼材です。社寺建築の屋根によく用いられるのは銅板葺ですが、鋼板と銅板ではそれぞれ特徴があり、葺き方も異なるので、比較をしながら鋼板葺の特徴を述べていきたいと思います。一番の違いは、費用ともいえますが…。

 まず、鋼板は硬いため、加工性は劣ります。例えば、出隅の葺き方ですが、銅板葺では「廻し葺き」といって、扇面状に裁断した葺板を用いて左右を連続して葺くため、丸いカーブを描きます。一方鋼板葺では、左右の鋼板を隅で折り曲げ、引っ掛け合わせて継ぐため、峰ができます。茅葺屋根でも、刈り込んで出隅は峰が出る屋根が多いため、鋼板葺で覆う場合にも違和感はあまりありません。

 また、軒反りについても違いがあります。銅板は柔らかいため、軒反りの大きな屋根でも葺くことができます。一方鋼板は硬いため、あまり曲げることができず、大きな軒反りを葺くことはできません。しかし、元の茅葺屋根自体、軒反りが大きくない場合が多いため、鋼板葺で覆う場合でも特に問題にはなりません。

 木工事で軒の下地を作るにあたって、後に葺く鋼板葺のことを考慮して軒反りを決めました。修理前に、軒の中央と隅でどれくらい差があるかを3面で実測し、経年劣化により中央が下がっていることを考慮して、最も小さい値で軒反り寸法を決めました。

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