文化財修理

福島県重要文化財蒲生秀行廟保存修理工事

 仕事納めとなりましたが、どうしても今年書き残したことがありまして、年の瀬も押し迫った今、この原稿を書いています。

 6月から、福島県指定文化財の蒲生秀行廟という建物の修理工事に関して、設計と工事監理をさせていただいています。町中に所在していながら、茅葺屋根が残っており、茅の腐朽と緩みが進んだため、葺替工事をすることになりました。当初は茅葺で葺き直す計画もありましたが、今後の維持管理を考慮して、耐久性が高く、茅葺の曲線を再現しやすい銅板葺で葺き直すことになりました。

 茅葺をトタンで覆うのとは異なり、銅板葺に改修するには、茅を全て解体して取り除きます。そして、元の野地の上に小屋束や母屋などを補足して、茅葺屋根の外形と同じになるよう新しい野地を作ります。9月から足場を建設して、茅を解体し、野地が見えるようになりました。

 福島県指定文化財では、補助事業として修理工事が行われる場合に、現場見学会や講演会などの活用事業を行うことが条件として付されます。このため、10月26日(日)に現場見学会が行われました。事前申込制とし、各回10名程度、5回の見学会で募集しました。当日はかなりの大雨であったにも関わらず、約30名の参加者がありました。

 

 蒲生秀行廟は江戸時代初めの慶長頃に建てられた廟で、修理のために調査した際に、彩色の痕跡がはっきりと残っていることが分かりました。顔料や墨の風食差により、文様の輪郭が残っているのです。このため、現在は一見素木に見える建物ですが、建立当初は、陽徳院霊屋(宮城県)や南部利康霊屋(青森県)などのように、彩色で文様や絵が描かれ、荘厳された華やかな建物であったことが推定できます。このことを、現場見学会で写真等を用いながら説明させていただいたところ、見学者には「面白い!」とたいへん興味を持って聞いていただきました。

 

 前職の文化財建造物保存技術協会に在籍していた時に、大崎八幡宮御社殿の修理工事に携わらせていただいたのですが、この御社殿は慶長時代に建てられた、彩色が見事な建物でした。今回、彩色は残っていませんが、痕跡を調べるほどに面白く、個人的に、「慶長」と「彩色」にはご縁があるのかなあと感じているこの頃です。

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