神社修理

拝殿鬼板の復元

 拝殿の鬼板は、途中の修理で取り替えられたものでした。建設当初のものとみられる本殿の鬼板と違い、叩き出した銅板ではなく、デザインも既製品としてありそうなものでした。今回、復元的な工事をするという方針でしたので、この鬼板について、当初の形を考察することになりました。初めは資料が何もなかったので、唐破風の鬼板が雲をモチーフにしたデザインであり、上山(石井)寅正が彫刻に関わった社寺の鬼板に雲をモチーフにしたものが多いことから、雲をモチーフにした鬼板で整備することになるのかと予想していましたが、宮司様に鬼板が写っている古い写真がないかお尋ねしていたところ、昭和時代に写したカラー写真2種を探し出してきてくださいました(タイトル画がそのうちの1枚です)。

 

 社殿横に立つイチョウの大木の紅葉を撮ったものと思われる写真は、震災前まであった元の社務所の2階から写したもので、社殿斜め前方からとほぼ真横から見たときの鬼板の姿がわかる貴重な資料でした。残念なことに、社殿真横から見た鬼板の写真は1/3くらいのところで画面が切れてしまっていましたが、これらの写真を根拠に図面を書くことになりました。

 写真をスキャンして、パソコン上で拡大してみると、鬼の頭のすぐ横に、先の尖ったモチーフが見えます。これは、本殿の鬼板と同じく葉をモチーフにした文様です。雲ではこのような先の尖ったモチーフは考えにくいです。しかし、本殿と全く同じ形というわけではないらしく、大きさもかなり違いますので、CAD上で輪郭をなぞり、本殿を参照しながら図面化しました。

拝殿鬼板の復元図

 本殿の鬼板も腐朽が進行し、補修が必要でした。半分は新材に取り替えて、接ぎ合わせなければなりませんでした。この補修や新しい鬼板の製作は、文化財修理や社寺の新築でいつもご協力をいただいている滋賀県の上北工務店にお願いしています。

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