文化財修理

下荒井観音堂の今年度工事

 会津若松市有形文化財に指定されている下荒井観音堂の今年度修理工事が始まりました。昨年度、工事内容と予算の関係で、工事を2ヶ年度に分けたのです。昨年度は屋根葺替を行い、今年度は柱の不陸と傾斜を修正します。8月から工事ができるように調整していただきました。

 工事着手前に柱のレベルを計測したところ、最も高い柱と最も低い柱とでは25㎜の差がありました。お堂は東を向いていますが、正面から背面に行くに従い柱が低くなっており、西南隅の柱が最も低くなっていました。また、柱の傾斜を計測したところ、どの柱も西南方向に傾いていました。柱の傾斜は柱の不陸によるところが大きいので、まずは柱の不陸を修正します。部分的に柱をジャッキアップしたり、押し引きしたりするため、縁廻りを解体して、長押や縁板掛けなどの水平部材を取り外し、軸部を一旦緩めます。また、北側の縁は、道路を挟んで向かいのイチョウの巨木が根を伸ばしており、縁束を持ち上げたしまったため、縁板の勾配が逆になっている部分があります。縁束のレベルも修正しなければなりません。

 お盆明けから解体工事を始めて、先週末に予定範囲の解体を終えました。縁廻りは近年修理されていましたが、長押は和釘で止められており、江戸時代から解体していないようでした。縁板を乗せる縁葛や隅扠首の上端で腐朽している箇所が多く、矧木で補修する必要も出てきました。特に、高くなっていた西北隅の縁束から東と南に少し行った辺りの縁葛で腐朽が進行しており、隅から低い方へ雨水が戻っていたことを物語っていました。

縁板解体後、縁葛及び縁束の状況
腐朽の進行した縁葛
縁廻り及び長押を解体した状況

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