神社修理

拝殿動く

 津島神社の現場では、7月31日に拝殿の曳家が完了しました。本殿の時と同様、一回背後にバックさせてから横にスライドさせました。社殿前の境内地を広く使うため、地盤改良終了後に戻す位置も、修理前より3mほど後ろを予定しています。

 7月19~25日で建物に鋼材をセットして揚屋をし、26~27日で縦方向の道レールを敷きました。そして、28日に背後へ6.5m移動させ、29~30日で今度は横方向の道レールを敷き、31日に横へ15m移動させました。今回は、本殿の時と動かす方法が異なり、ウインチで引きました。前回の押しジャッキは「押す」イメージでしたが、今回のウインチは「引っ張る」イメージです。拝殿の方は、ウインチを上から押さえておく重機が入るスペースがあったため、この方法を取ることになったのです。6.5m移動させるのに、所要時間4分という速さでした。本殿は西へ、拝殿は東へ移動させたので、現在は正面から見ると、本殿と拝殿が左右バラバラの位置に見えるという滅多と見ることのできない光景になっています。ご近所の方々には、ぜひご参拝いただきたいと思います。

 ゲージで量った総重量からレールの重量を差し引いて、拝殿の重量は約60tと推測できるそうです。このような重量物を持ち上げ、水平に滞りなく移動させる技術は、さすが専門家のなせる業です。江戸時代、石や巨樹などの重量物を運ぶ職業として「算段師」と呼ばれる職業があり、明治時代にこの集団から、建物を運ぶことを専門とする職人が登場したそうです。曳家とは、建物を壊さずに移動させて使い続けるための手段であり、環境に優しい考え方だといえます。元来日本建築は、周辺にある植物性の材料を使用したり、古材を再用するなどエコな側面を持ち合わせていました。最近よく耳にするSDGs(持続可能な開発目標)という言葉。古来からの考え方にもクローズアップする時が来ているのかもしれません。現在はまだまだ「買った方が安い」という世の中ですが、本当の意味で持続可能な社会になるよう努力していかなければならないと思います。

曳家完了後に正面から見た光景

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